サーキュラー・エコノミー

「サーキュラー・エコノミー」(中石和良著・ポプラ社新書)


「SDGs って具体的にどうするの?」

こういう疑問を持つ方、とても多いと思う。

この本では、最初に「サーキュラー(循環)」とは何かを「リニアー(直線)」との違いを用いて説明します。

いままで私たちが接してきたのは「リニアー」な経済。

メーカーや生産者が作ったものを売り渡したら終わり。

これがリニアーな経済です。

それに対し、「サーキュラー」とはなにかを、掃除機を例に出して説明しています。

「リニアー」では、消費者が掃除機を手に入れたら、掃除をするための道具として使う。

もし、どこかが壊れたら、修理に出すか新しい掃除機を購入することになる。

「サーキュラー」な経済では、掃除機を生産するメーカーが、掃除をする道具を貸し出す。

なんだ、単なる「サブスク」か?

私も、最初読んだときはそう思ったけれど、読み進むと、メーカーの所有物であるが故に、

「壊れないような設計」

「壊れても直しやすい設計」

「廃棄物が極力出ないような設計」

に向かい、もし使用されずに返却されても、必要以上の生産をしなくなる。

こういう考えが、新たな資源の利用を抑え、廃棄物の削減も行うと説明が続く。


掃除機の例の他にも、さまざまな業界における「サーキュラー」なビジネスモデルの例が示されている。

「なるほど!」と思ったのは、「紙」と「デジタル」の関係。

ペーパーレスが叫ばれて久しいが、世の中にはまだ「紙」があふれている。

古本屋としては、「紙の本」がすべて「電子書籍」になってしまったら困るのだが、実際にはそのようなことは起きない。

「紙」という資源のうち、「チラシ」や「パンフレット」などは、印刷はするものの、有効に配布され読まれる「紙」は驚くほど少ない。

ほとんどが無駄に消費されるが、世の中にはまだ紙があふれている。

「紙の本」は無料ではないので、読むという意思がある人々が買い求める。

だから、有効に消費される部類の「紙」なのである。

SDGsの対応として必要なのは、無駄になっている「紙」をいかに有効な「紙」とするかということ。

ネットショッピングでは、画面に出る説明を見ながら、ポチッとしてカートに商品を入れる。

しかし、レジを通さずにそのままにしてしまう顧客は多い。

こういう顧客は興味を持ったことは確かなのだから、その商品が買いたくなる「紙」を送ると、購買行動が促進されるという。

つまり、「デジタル」で意思を確かめてから、「紙」の一覧性や視覚性を有効に活用することが、SDGsに有効だと言うのだ。


本は、紙にしろ電子書籍にしろ、なんらかのテーマに従い、深く掘り下げて書かれたものがひと単位となることが多い。

一方、インターネット上に存在する無数のデータは、検索エンジンにより関係しそうなものが一覧で表示され、そのなかから関係ありそうなものを自分で見つけ出す。

だから、ネットで得る知識と、本で得る知識は、基本的にその構造が異なる。

電子書籍の内容(本文)は、ネットで検索できないもの。だから、検索にはのらない。

「紙の本」は、物理的な資源である「紙」を消費し運送するために燃料を必要とする。だが、読者に届けられて以降はエネルギー消費が無い。

不要になっても、古本屋へ売り渡したり、古紙回収に出して資源を再利用することができる。

「電子書籍」は、そういう資源を使わないが、読むときにはリーダーで電力を消費するし、その本の所有権を管理するサーバーは、いつまでも電力を使い続ける。

また、資源の再利用という事はできない。


SDGsを考えるとき、デジタル化こそが地球によいとは一概に言えない。

この本は、ビジネスに関する本だが、各自の暮らしの方向性を考えるのにもとても役立つ。

「SDGsって、何すればよいの?」というあなた、

おうち時間に、のんびりと読んでみるのにオススメです。