月: 2021年10月

人新世の「資本論」

「SDGsは大衆のアヘンである」

という衝撃の言葉から始まる本書。

「温暖化による地球の崩壊」を主なテーマにかかげ、誰もがおぼろげ思っている「資本主義の崩壊」を、理論的に示した内容だ。

2020年9月の出版後、1年経ったいまでも、新刊として書店の店頭に並ぶ。

古本市場でも、値段が下がらない良書だ。

図書館では、半年くらい待たされるくらいの予約待ちになっている。


著者の斎藤幸平は、4つの世界の選択肢を示し、④のXを目指すための説明をしていく。

この④は、いったいどんな状態なのか?

衆議院選挙を目前に控え、政治にはどういう体制を、個人ではどんな未来の生き方を模索するかを考える補助線として、とても考えさせられる。

「損得勘定」や「臭いものにはフタ」という、欺瞞にあふれた世の中において、幸せに生きる本質を定め、それに向かって進む指南書ともいえるだろう。

アレルギーのような抵抗を示す読者もいるだろうが、このような言論が出てくることは、やはり世の中がおかしくなっていることへの警告だと受け止めた方がよい。

秋の夜長にじっくりと読めればよいが、実際には「早く次のページをめくりたい」という衝動に駆られ、一気に読んでしまうくらい魅力にあふれた内容が続く素晴らしい本だ。